まずは乳房温存術が可能かを判断
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乳がんの手術は、乳房全部を切除(全摘)する『乳房切除術』と、がんを含む乳腺の一部を切除する『乳房温存術』に大きく分けられます。かけがえのない乳房を全摘する手術をすべきか、乳房を温存する手術でも本当に大丈夫なのか・・・とても重要な選択です。
もちろん、まず考慮すべきは乳房温存術です。『乳房温存術+放射線治療』と『乳房切除術』では、生存率に差がないことがすでに証明されています。ですから、幸いに小さくして乳がんを発見できた方には、乳房温存術と術後放射線治療をお勧めします。乳房温存術が可能である目安はしこりの大きさが3cm以下ですが、乳房が大きい方はしこりが3cmより大きくても温存術が可能になることもあります。しかしすでに病変がかなり大きい(広い)場合、乳房を温存する手術は難しくなります。無理に温存手術をして乳房内に再発すると、ひいては命を縮めることにもなりかねません。また、切除範囲が大きくなるとせっかく温存した乳房でも変形が強くなり、整容的に満足できる結果が得られなくなります。
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それでも乳房を失いたくない・・・
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病変が大きくてそのままでは乳房温存術が適応できない方の救済策は2つあります。一つ目は、先に抗がん剤を投与して病変を小さくしてから手術を行う『術前化学療法』という治療法です。手術までに数ヶ月かけて治療しますが、しこりが小さくなれば通常の乳房温存術が可能になります。二つ目は、失った乳房を形成外科手術でつくる『乳房再建術』です。人工物であるシリコンを入れる方法と、自分の背中やおなかの筋肉脂肪を移植する方法があります。
当院ではこれらの治療に積極的に取り組むことで、かけがえのない乳房を失って大きな精神的、肉体的苦痛を受ける女性を一人でも救えるように努めています。
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リンパ節はどうするの?
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乳がんの手術では乳房の切除法(全摘/温存)に関係なく、わきのリンパ節を一塊にして切除することが現在の標準治療とされています。しかし、これによりリンパ浮腫などの悩ましい合併症が起きる可能性があります。最近では、少数のリンパ節を生検するだけで転移の有無を調べる『センチネルリンパ節生検』という方法が実践されています。
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よく考えて最善の選択を
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これまで説明した方法には、それぞれ欠点(リスク)もあります。あなたのがんの病状に適した治療法にはどのような方法があるのか、その方法の利点と欠点は何なのか、主治医とよく話し合って最善の治療法を決定してください。
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手術のための入院期間について
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ほとんどの方は手術後7〜14日程度で退院可能となります。退院後はすぐに通常の日常生活ができます。病理検査結果が判明するのは手術から約3週間後になりますので、退院後の外来で結果を説明しその後の補助薬物療法の方針を決定します。 |